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『椅子と日本人のからだ』 

『椅子と日本人のからだ』 矢田部英正著 晶文社刊

本書は、日常我々が使用し、お世話になっている椅子について考察したもので
ある。あまりにも日常化しているので、椅子についてあれこれと思いをはせることは、誰でもあまりないだろう。
背中や腰が痛くなると、この椅子、どうもあわないなあ、と思う程度か。
著者は、自身が学生時代に体操選手として過ごした経験から、身体について研究するようになり、また、職人でもある。
人間のからだにはどんな形態の椅子が理想なのか? 論は『すわる』、『座』から日本人の衣服、つまり和服から食事作法までにおよび、からだのつかい方の根本を探ることによって、人間工学、身体技法へと進められて行く。
そこから、『座』に関する欧米と日本との差異が浮かびあがってくる。
終章の『物質文化と身体技法』では、『真にクリエイティブな人間ほど、理論の基盤に安住することによって陥る感覚の停滞を嫌うのである』という言葉が記されていて、理論信仰にかたよることを戒めている。
つまりは、椅子に限らず、『魂』のないモノ作りは、自然物たる人間に適さない、ということである。 本書を読むと、オーダーメイドの靴のように、自分専用の椅子が欲しくなってくる。これこそ真の贅沢である。

 また『玉座』や『チェアマン』の語源についても言及されており、ふうむ、たかが椅子と言いながら、これは油断ならぬぞと感心しきり。