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Vol.78 垣根(1)

J・H のささやき VOL.78 『垣根(1)』

こんにちは、ジェームス・ホントです。

垣根の 垣根の 曲がり角、たき火だ たき火だ 落ち葉だき ♪ 
こんな童謡がありますね。
いまのご時世、(ごくたまに見かけますが)、自宅の庭で焚き火もできないとか、
妙な時代ですね。昔は秋・冬の風物詩でしたが。

  『減少する生垣』

現在の新築された住宅には、垣根はあまり見られませんね。ストンと道路に面して
いて、アケッピロゲです。敷地が狭いからそうなのか、どうも理由がわかりません
が、愚生の住む近在では、垣根、あるいは塀がない新築住宅が実に多い。
開放的と見るべきなのか?

建ててからけっこう時間がたっているな、と思われる家には、ほとんど垣根か塀が
ありますね。塀はブロック塀か金属製の柵が多いようです。植物を植えた生垣は減
っています。
たまに渋い竹矢来がありますが。

垣根の骨組みは木、または金属で、その内側にツゲ、マキ、サカキといった植物が
植えられています。いずれも常緑樹です。
落葉樹だと、秋、冬には葉が落ちて、垣根としての用をなさないので、これは当然
です。つまり、垣根は、家屋を人の目から覆い隠すためのものですから。
悪く言うと、遮断するものです。より根源的には外からの災厄、あるいは賊から守る。
ある種の職業のひとの家は、だいたい高い塀、それも頑丈そうなブロック塀が多い
のですが、高くて威圧的な塀に囲まれて、『猛犬に注意』との警告のステッカーが
貼ってあります。威圧を超えて、とても威嚇的で、ちょっと不快ですね。

  『所領安堵』

さて、垣根の垣、語源は『カクミ(囲)』、『カクシ(隠)』。
垣根は、遠い昔、とても重要な意味を持っていました。
まず、土地を囲うことによって、自分の所有権を確立します。
財産権のはじまりです。
所領安堵という言葉が鎌倉時代に出てきますが、この安堵の『堵』は、カキとも呼
びます。つまり、カキを安んずる、という意味です。
いまでも、『娘の結婚式が無事にすんだので、ほっと安堵したよ』なんて使います
ね。
            
たとえば、政治的実権を握った源頼朝は、なぜ、天下人になったのか?
土地を所有する当時の武士(後世のような兵農分離はまだ少なくて、ほとんどが農
民であると同時にサムライでもあるという身分でした)たちに、『おまえらの土地
の所有権はおれが保証する。奪うものがいたら、おれに言え。奪い返してやるから。
そのかわり、おれの部下、配下になれ』ということでした。
主従関係の確立で、封建制(ドイツ語ではレーンと言います)の始原的な形態を意
味します。それまでは、いつなんどき自分の土地が横領されるかわからない。
誰もが不安な思いで日々暮らしていました。
頼朝は、所領安堵を関東武士に確約することによって、棟梁としての権威を勝ち取
り、幕府を創りました。
現代なら、『安倍総理、国民の所領安堵、頼みますよ!』でしょうか?      
 
カクミの機能は縄張り、障屏、占有、防護、防衛、などです。
カクシの機能は隠匿、障蔽、となります。
で、ブロックなどはない時代なので、色々な植物が垣根に使われたわけです。

現在、垣根も塀もない家に住んでいるひとは、そうした意識がないのでしょうか? 
つまり、世の中は安全なんだから、そんなもんはいらないよ、と思っているのか?
あるいは、そんなものは、イザとなったらなんの役にも立たないよ、だったら、垣
根や塀なんかない方がいっそスッキリしていいよ、と思っているのか?
単なる建設費削減なのか?
『小さな家で、垣根や塀を設けるほどの住まいではございません』の表明なのか?

  『囲いのないアメリカの家』
 
たとえば、アメリカの映画なんぞを見ると、なんの囲いもない住宅が、道路に面し
てズラッと並んでいますが、あの影響なのでしょうか?
アメリカはあれほどの銃社会、不用心だと思うのですが、あれは治安の良い、富裕
層が住む住宅街の風景なのでしょうか?
 
確かに、国の壁を越えてとか、人種の垣根(壁)を越えてとか、そうした物言いは
多用されますが、最近の囲いのない家の増加は社会情勢、国際情勢となんらかの関
係があるのか、まったくないのか、一考に値いしますね。
 
   参考図書 ものと人間の文化史 『垣根』 額田巌著 法政大学出版局
              その他