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Vol.79 垣根(2)

 J・H のささやき VOL.79 『垣根(2)』

こんにちは、ジェームス・ホントです。

イギリスとEUとの間に、垣根が出来てしまいました。イヤハヤ!
さて、その垣根は高いのか低いのか?

     『垣の系譜』

日本人は、自分の屋敷を護るために、色々な種類の垣を考案してきました。
そして神聖な場所を囲う垣については、その本体はもちろん、垣そのものの永生を
願って、数年毎に取替え、永遠の生命を保たせるように工夫してきました。
垣には考案者の名前や土地の名前、寺の名前などをつけたので、その垣名は後世に
伝えられました。

火にも風にもこわれない頑丈な垣として、土と石を混ぜて築地垣が作られましたが、
これらの垣や塀は、千年を越す風雪にもさほど崩れず、奈良の各所に見られます。

万葉集に、板葺きが出てきます。また竹垣、葦垣も登場します。つまり、近在から
容易に手に入るものを垣として使用していました。
たとえば、荒垣。ひとの名前にもありますが、荒垣というのは目の荒い垣のことで
す。
葦は、川岸によくなる背の高い植物で、葦は悪し(あし)に通じるので縁起が悪い
ということで、反対の『良し』と無理に読ませていますね。落語に出てくるヨシワ
ラは、葦が沢山はえる地域ですが、アシハラ、アシワラでは塩梅が悪いので、ヨシ
ワラと読ませ、ヨシには縁起の良い『吉』を当てています。
梨を、『無し』に通じるので縁起が悪い、反対の『有り』にしようということで、
梨のことを、有りの実、と言い換える語法ですが、日本人は、こうした言い換えが
巧みで、スルメをアタリメと呼ぶのも同類です。
 
話がそれてしまいしたが、垣のうちで最も永い歴史を持つのは柴垣です。
『おじいさんは柴狩りに行って』の柴です。シバは、枝葉のことで、枝はシ、葉は
バです。つまり、樹木の細かい枝や葉のことです。
柴垣は、家を防御するのが目的ではなく、風をさえぎるとか、目隠しにする程度で
すが、古代には他人の家をのぞく『垣のぞき』の風習がありました。
綺麗な女性(にょしょう)でもいれば、ついのぞきたくなるのが男の本性です。
『垣間見える』という言葉がありますが、見えるのと、のぞくのでは大違い、現代
なら通報されかねないので、慎みましょう。
 
そのほか、板垣、透垣(スガキ)、ませ垣、組垣、檜垣、唐垣と様々ありますが、
植物が主です。もちろん、遠い昔だから、ブロック塀などないですね。

    『寺院の垣』

仏教の伝来とともに、仏教建築の技術も同時に伝えられました。
寺院の外郭に高い築垣(ついがき)をめぐらし、四方に門を開きます。威風堂々、
あたりをはらう、という威容です。なんと言っても格式がモノを言うので、貧弱、
貧相では人心をとらえることはできません。有り難味もない。見た目が重要なんで
すね。
築垣はやがて、宮殿にも使われはじめ、中には、石炭(!)で土塀を築き、その上
部を瓦で葺いた寺院もありました。築地塀(ついじべい)と呼ばれましたが、築垣
と同じものです。
時代が下ると、『筋塀』が出てきて、これは板を芯とし、泥土、漆喰を使い、屋根
は瓦というもので、当時の上流階級が採用しました。
ただ、他人から完全にシャットアウト、という冷たい印象から、風流という観点で
は評価されませんでした。ちょっと野暮だな、ということでしょうか。
前回に書いた高い塀と『猛犬に注意』と同様の、イヤな感じを与える塀です。

その点、お寺の塀は、荘厳さとともに、ある種の安らぎを感じさせるモノが多い。
とにかく、ひとを寄せ付けないようでは賽銭も集まらない。で、心が安らぐような
構えになっています。それゆえ、寺院の名を冠した塀があまたあります。
建仁寺垣、大徳寺垣、金閣寺垣、銀閣寺垣、竜安寺垣、南禅寺垣などが有名で、そ
れぞれに特色があります。
          
 参考図書 『ものと人間の文化史・垣根』 額田巌著 法政大学出版局