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VOL83 瓦考(1)

J・H のささやき VOL.83 『瓦考(1)』
こんにちは、ジェームス・ホントです。
先の台風では、瓦の飛んだ家屋もあったようです。
これがあまり軽いと強風で飛んで役に立たないし、あまり重いと、負荷がかかりす
ぎて問題です。また重い瓦が万が一飛んで人間を直撃すると危険極まりない。
台風がよく到来する地域の瓦は、漆喰で目地をしっかり固定しています。
強風や台風から屋根を守るために、板葺き屋根に小石をいくつも置いた光景は、今
でも地方では見かけますが、あれは生活の知恵ですね。
 
瓦はまことに地味な存在なので、瓦の付く言葉は多くありません。
瓦解、瓦礫というのは、良い言葉ではないですね。
『××内閣瓦解!』とか。
日常会話でも滅多に登場しませんね。だいたい目にしませんから。
瓦版は、テレビの時代劇にはよく登場しますので、誰でも知っています。
いまで言う新聞。『読売』です。
『御公儀が生類憐みの令を発したぞお! さあ買った買った!』なんて。
また瓦煎餅というのもあります。瓦に模した煎餅ですね。
神戸が発祥の地のようです。
鬼瓦という言葉も多用されますね。あいつは鬼瓦のようなツラをしてるぜ、なんて。
鬼瓦は、屋根本来の目的である雨や雪から建物を保護するという観点からは、装飾
性の意味合いが強いものですが、建物に悪神がとりつかず、福を招くものと考えら
れていたので、それなりに大切な役割を帯びていました。
屋根を装飾する瓦を道具瓦、役瓦と言います。
 
鬼瓦は大きな建物や寺社には今でも使われていますが、一般家屋には、もうほとん
ど使われていないのでは。昔は、ここは御大尽の家だなとか、豪農だなと思われる
家の屋根には散見されましたが。家紋入りもありました。
『近代』の条件とされるものの中に、『呪術性からの解放』が入っているので、鬼
瓦の機能を信じる現代人は死に絶えたようです。
『ただの迷信だろ』
お金もかかるし。
でも、沖縄に行くと、どこの門前にも魔除けに一対のシーサー(獅子)がデンと構
えていて、古来の風習を守っている様子が、えも言われず心をなごませます。
あれはいいものです。
瓦は甲羅と同源の言葉で、また瓦と同じ意味を持つ甍(イラカ)は鱗(ウロコ)と
同源と言われています。
 仏教学者の説には、次のようなものもあります。
『瓦は、インド・サンスクリット語のカパーラで、それがカパラ、かはら、かわら
になった』
笑ってはいけませんよ。
寿司屋では米のことをシャリと呼んでいますね。
これはサンスクリット語で骨、つまり亡くなった仏陀(おシャカさん)の骨がこま
かくされて、それが米粒に似ているので、米のことをシャリと言うようになった。
という説は皆さんもご存知ですね。
井上靖の名作『天平の甍』は、唐から来日した僧・鑑真を描いた歴史小説です。
鑑真は6度目の航海でようやく来日、すでに盲目となっていましたが、754年に
来日して、日本の仏教興隆に一役買いました。 
鑑真和尚は東大寺に戒壇を設け、唐招提寺を建立しました。
唐招提寺に鑑真の坐像がありますね。
日本史の教科書に載っています。盲目ですから目をつぶっています。
 
小説に出てくる甍は、唐招提寺の鴟尾(シビ)のことです。大棟の両端にある、あ
の豪華な瓦、シャチホコのことです。
 
瓦は言うまでもなく屋根葺き材です。
瓦が出現するまでは板葺き、茅葺き、藁葺き、檜皮葺き、杉皮葺きですから、瓦の
出現は、家屋にとって大変な進歩でした。
現在は、瓦のほかに、銅板、トタン、プラスティック、スレート、板石、セメント
など屋根の構造が複雑になるにともなって、屋根材は実に多種多様です。
 
瓦は丸瓦と平瓦に大別されますが、日本の瓦では降雪に強い石州瓦(島根県浜田市)、
黒瓦で有名な淡路瓦(兵庫県淡路島の西淡町・津名町)、尾張藩が製造を奨励した
三州瓦(愛知県高浜市・碧南市)が特に有名です。
ほかにも栃木の粘土瓦、群馬の藤岡瓦、さらに鬼瓦専門ですが大分県も生産してい
ます。
さて、瓦はいつからあるのか?
日本には1400年前に中国から瓦作りの技術が入ってきました。
中国では、なんと3000年も前から作られていました。彼の国はなんでも古い。
とてもかないません。
         
 参考図書 『ものと人間の文化史・瓦』 森郁夫著 法政大学出版局    
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