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VOL.76 『材木考 楠(1)』

J・H のささやき VOL.76 『材木考 楠(1)』
こんにちは、ジェームス・ホントです。
予定を変更して、楠でまいります。
   『大楠公はいずこへ』
楠とくれば、楠木正成(くすのき・まさしげ)ですね。
終戦までは、日本人に最も愛された武将のひとりです。
進化した現在の歴史評価では、『悪党の親分』、『山賊の棟梁』とさんざんですが、
戦時中は、大変な人気者で、英雄でした。
なんと言っても、南北朝(14世紀)の時代に、武家政権を倒して天皇親政を夢見
た後醍醐天皇に付き従って、足利一族と戦った武人ですから。
正成は奮戦するも足利尊氏に破れて湊川で戦死しますが、忠臣の中の忠臣と呼ばれ
て、大楠公と称されました。いまでもどこかに銅像があるのでは?
作家の司馬遼太郎は、『南北朝の時代は、食指が動かないので書く気になれない。
どうも、好きになれそうな人間がいないんだなあ』といった趣旨の発言をしていま
したが。
現在、楠木正成について語るひとは、まずいないでしょうね。
さて、前置きが長くなりましたが、楠、これは、大変な樹木なんですよ。
木偏に南ですから、誰もが南方系の木だと思いますよね。
その通りで、関東以北では見られません。
千葉、神奈川、静岡、愛知、三重、和歌山、四国とそれぞれの沿海地域に限られ、
九州になると、ほぼ全域に分布しています。
ところが、もっと南の沖縄に行くと、ほとんどない。植生の面白い所です。
   『美しい照葉樹』
愚生の住まいの近くにもあり、葉はテラテラと光って、常緑広葉樹です。照葉樹の
象徴と言ってもよいのではないでしょうか? 美しい木です。
材質は堅く、耐水性に富み、容易に腐食しません。
白く淡い黄緑色の花が咲き、夏になると黒というか濃い紫というか、8㎜ほどの実
がなり、実の中の種子は、これを食べた鳥がふんとして出します。
 
楠はまた樟とも書きます。樟脳の樟です。つまり、防虫剤に使用されますね。
昔、甲子園に出場した高校に樟南高校(鹿児島県)がありましたが、鹿児島、熊本、
宮崎に行くと、驚くような巨樹に出会います。
あるセメント販売店の社長に案内されて、宮崎県の南方神社に行ったことがありま
す。そこで見た楠の巨樹は今でもありありと思い起こされます。
また同県には、『木の周りを一周するのに七日間かかるほどの巨樹がある』という
ホラ話がありますが、こうした気宇壮大な与太話は愉快でいいですね。
そうそう、熊本城内(藤崎台のクスノキ群)にも巨樹がありましたが、無事でしょ
うか?  
 
   『カンフル剤』
クスノキは、別名クス。地域によってはタブとも言われます。
原産地は中国の揚子江以南です。
語源は、平安時代に書かれた我が国最初の漢和辞典『倭名類聚抄』(わみょうるい
じゅうしょう)によると、『クスリの木』とのこと。
また古代人は奇し(くすし、つまりあやしい、不思議な、霊妙な)木と感じたこと
から、ともあります。
カンフル剤、今でも使いますね。英語ではCAMPHORで樟脳のことです。
クスノキは、『薬用植物』として、世界共通のようです。

参考図書 『ものと人間の文化史・楠』 矢野憲一・矢野高陽著 法政大学出版局